interview鹿児島の経営者 対談シリーズ
鹿児島の経営者 対談企画02
投稿日:2023年05月13日
急速に進む少子化。その背景の一つに結婚、出産に踏み出せない若者の不安定な経済状態があるとされる。結婚相談所「縁サポートJin」を運営する徳人の井手泰孝社長と、年間約200回ものマネーセミナーの講師を務めるフィールドヘッドの田頭司社長に、婚活のこと、お金のこと、そして事業を通じた地域貢献への思いを語ってもらった。
ネガティブな雰囲気をポジティブに
井手 銀行勤めをしていましたが、婚活を通して社会貢献できる仕事をしたいと考え、結婚相談所を開設しました。2017年4月に鹿児島中央駅前の南国センタービルにオープンして丸6年になります。当初、鹿児島に婚活の文化があまりない環境の中で苦労しました。でも、社会貢献できているという実感をしっかり持ち続けることができ、事業も着実に推移し、今はこれしかないとやりがいを持って取り組んでいます。
田頭 アメリカ留学時代に学費稼ぎのため日本食レストランで働いていた時、カウンターのお客さん同士がお金に関して情報交換する光景が普通に見られました。結婚を機に帰国後、大手保険会社勤務を経て独立したころ、資産運用の相談を受けることが多く、天文館のカフェで3、4人の少人数で6年前開いたことがマネーセミナーの講師を始めるきっかけになりました。
井手 マネーセミナーなら田頭さんと言われるほどになっています。そこに至るまでのプロセスをぜひ知りたいですね。
田頭 資産運用やお金のことを考えようというポジティブな雰囲気はここ数年のこと。それまではネガティブな空気感がありました。セミナーでは考え方や方法を伝え、その中から参加者が続けやすいやり方を見つけてもらうようにしています。行動に移しやすいように個別相談会も設け、それぞれの家計に応じた具体的なプランをアドバイスしています。相談して家計がこんなに良くなったという満足度が上がると、その人がさらに友達を紹介してくれるという好循環につながっているようです。
井手さんは何か工夫されていることはありますか。
井手 アンケートでは、いずれ結婚するつもりという人は9割弱なのに実際の結婚数は減り、子どもの数も減っています。これはなぜかと考えた時、出会うチャンスに恵まれないことに加え、婚活で動きづらい雰囲気があるかなと考えました。私はそこを突破して婚活に堂々と動ける環境づくりをするため、結婚相談所は鹿児島と国分の2カ所とも敢えて繁華街の道路に面した場所に開設しています。プロポーズまでカウンセラーが丁寧にサポートしており、成婚率は約7割です。真剣な方同士なので出会ったら結構早くまとまり、成婚者は登録から平均8カ月前後で成婚退会していかれます。
結婚や家計には正しい知識が大切
- 徳人
- 社長 井手 泰孝
- 縁サポートJin HP
田頭 セミナーでは家計改善と資産運用をダブルのテーマで話すことが多く、個別相談でも特に固定費の見直しをアドバイスしています。資産運用もいいのですが、意外と見落としがちなのが目の前の固定費です。電気代や水道代、保険料など毎月出ていく費用を少しずつ見直していくと簡単に月5千円とか浮いてきて、一度の見直しで大きな効果が得られます。例えば30代の人が月5千円の見直しだと70歳くらいまでには200万~300万円浮きます。これは投資で殖やしたことと一緒です。
井手 お金がないと結婚できないのではないかという雰囲気がありますが、本当にそうなのかと思います。アンケートでは、結婚後に必要な年収について既婚女性は300万~400万円あればいいと答えていますが、未婚女性は500万円超です。正しい情報を知れば、結婚していいんだ、子どもを産んでいいんだとなります。でも、お金にずさんだといけないし、暮らしには経営感覚を持たないといけません。独身のうちから結婚した後の家計について正しい知識を得ていくことは大事ですよね。
田頭 私は子どものころから行動力のあるタイプでしたが、何かしたいと思ってもお金が理由であきらめることが多くありました。だから20代後半から自分のためにお金について勉強し、株式投資なども始めました。投資を通して経済に詳しくなると世の中の捉え方も生き方も変わってきました。子育て世代に伝えたいのは、教育資金はできるだけ多い方がいいということ。お金が理由で子どもの進路の選択肢を狭めるのは不幸です。
井手 結婚したいと思う人たちが積極的に婚活できる環境づくりを通して結婚し、子どもが生まれ、豊かな人生を送ってほしいなと思います。婚活中の会員と、結婚して退会した人が集まって交流する会を定期的に開いています。そこで田頭さんに結婚後のお金について話してもらう機会を設けました。私は結婚がゴールではなく、むしろスタートだという考えで仕事をしています。
豊かで幸せな人生のサポート役として
田頭 学校教育でもお金について考える時間が増えてきて、高校から講演の依頼が来たりします。そうした依頼には積極的に応えるようにしています。現在、お金に関する小学校の副教材づくりにも携わっていて、書店でも販売されます。これに続いて中学生、高校生、大人向けとシリーズ化できたらおもしろいなと考えています。海外だとお金の授業は当たり前に行われています。鹿児島の子どもたちがお金について正しい知識を得て、豊かな人生を送るきっかけになってもらえる活動で社会貢献したいと思います。
井手 昨年の出生数が80万人を割りました。少子化でよく使われる合計特殊出生率は、15~49歳の未婚者も含めた女性の数を分母にした数字で1.3程度です。一方、夫婦の最終的な平均出生児数である完結出生児数は1970年代の2程度からあまり変わっていません。つまり結婚する人が減っているから少子化が進んでいます。結婚したいとほとんどの人が思っているのだから、出会いの機会を設け、結婚するまでをサポートしていくことは重要です。結婚相談所を立ち上げてからこれまで237人が結婚しています。ここ2年間で20人以上の元会員の方から赤ちゃんが生まれたという知らせを受け、大変喜びを感じています。そうした報告を受けた時が一番うれしいし、仕事を通してちゃんと自分は社会貢献しているなと自負しているところです。
田頭 コロナ禍では他の企業等のマネーセミナーが開かれない状態の中、私はむしろ参加者を少人数に抑えて続けました。昨年1年間は私財を投じて、セミナー費用に充てました。その結果として、現在は参加者数の増加として現れてきています。これからも一人でも多くの方の人生の豊かさをお金の面でサポートしていきます。
井手 幸せな人生にはちょっとしたことの積み重ねが大事ですよね。マネーや婚活の話をちょっと聞いてみる、ちょっと出会いを求めていく。その意識と行動の積み重ねで人生も社会も変わっていくのかなと思います。結婚したいという思いをしっかり持って主体的に動いていくと、周りが変わり、出会いも生まれます。
- フィールドヘッド
- 社長 田頭 司
- フィールドヘッド HP