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interview鹿児島の経営者 対談シリーズ

鹿児島の経営者 対談企画03

投稿日:2023年08月21日

鹿児島の経営者対談企画3

鹿児島と奄美・沖縄、十島を結ぶフェリーの貨物輸送をメイン事業とする中川運輸の吉冨秀介社長と、ファイナンシャルプランナーとして企業経営や家計をサポートするマイエフピーの野口裕幸社長は、上智大学時代のゼミ仲間。同大卒業生で組織する地域ソフィア会全国大会が9月9日、鹿児島で開催される。お二人に大学時代や仕事のこと、地域への思いなどを語ってもらった。

鹿児島で地域ソフィア会全国大会開催

吉冨 上智大外国語学部ロシア語学科に入学した年の夏、大韓航空機がソ連機に撃墜されるという事件が発生しました。ラ・サールの恩師が犠牲になったこともあり、2年時から経済関係の科目を履修し、3年時に経済学部経営学科に転部科しました。野口さんとは学園祭の実行委員会などを通じて以前から顔見知りでしたが、会計学の佐藤眞一先生のゼミで2年間一緒に学んだ縁で親交を深め、現在に至っています。

野口 私は吉冨さんより1年早く経営学科に入学し、3年時から佐藤ゼミでした。大学に5年間在籍したので、吉冨さんとは私が4、5年生の時の同じゼミ仲間ということになります。上智は小ぢんまりした大学でしたが、いろんな考え方に触れることができ、自分の人生にとって大きな宝となっています。学園祭の前夜祭で全学生の3分の1が参加した提灯行列の出発の号令をかける役を務め、その夜は寮で一人900㎖入りの焼酎瓶を空けるまで飲みながら達成感に浸りました。

吉冨 佐藤ゼミで企業会計原則を学び、卒業後は8年間の銀行員生活でさまざまな企業の決算書を見る機会に数多く恵まれたことが、現在の経営に役立っています。企業経営にとって重要なのは収支バランスとその結果。当社の幹部社員には、会計学を知らなくても貸借対照表など財務諸表を見れるようになりなさいと強調しています。上智で学んでよかったのは、カトリック系ということもあって利他の精神が自然に身に付いたこと。教授陣や学生にも外国人が多く開放的な空気がありました。9月の地域ソフィア会全国大会では各地から訪れる卒業生をおもてなしの心でお迎えしたい。2日目のエクスカーションでは桜島・霧島、知覧・指宿、ゴルフの3ルートを組み、鹿児島の歴史と自然、食を堪能してもらう計画です。

野口 上智の卒業生は短大なども合わせて現在、鹿児島県内に約150人が把握されています。吉冨さんは鹿児島ソフィア会の会長、私が事務局長を務めています。「上智の縁は一生、ゼミの縁は永遠」という言葉があります。地域ソフィア会全国大会ではぜひその言葉を実感できるとともに、鹿児島の魅力を体感してもらいたい。佐藤ゼミでは在学中よく分からなかったことも、仕事で企業の決算書を見せてもらう機会を積んでいくなかで、ああ、こういうことだったのかと理解できるようになりました。企業会計も家計も、入るお金と出ていくお金の計算を常にしておかないと、どんぶり勘定では長続きしません。さらに今を基準にするだけでなく、5年後、10年後はどうなのかというところも考えていく必要があります。

人手不足対策や信頼関係構築に注力

吉冨秀介社長
「海上輸送で離島振興の一翼に」
中川運輸
社長 吉冨 秀介
中川運輸株式会社 HP

吉冨 当社は1944年に祖父が設立し、最初は鹿児島と種子・屋久を結ぶ貨客船事業から始まり、来年で設立80周年になります。現在は喜界島以外の奄美諸島・沖縄、十島と鹿児島を結ぶフェリーの貨物輸送のほか、十島村の村営船「フェリーとしま2」で代理店業務と船内レストランを村から受託しています。鹿児島からの荷物は生活物資、島からは農産物が中心です。島の生活や経済を支えるライフラインとしての使命感を社員全員で共有して業務に当たっています。船が止まると島の生活に支障が出るだけに台風シーズンになると気が抜けません。

野口 生命保険代理店業務をメインに、保障見直し診断、企業経営・家計のリスクコンサルタント、退職金対策、事業承継、相続対策、資産運用などを扱っています。2001年からMBCラジオで毎週火曜に放送している「おしえて野口さん」は事業承継や資産運用など毎月のテーマを決めています。当初、放送局の方から長く続けることが大切だというアドバイスをもらいました。既に1千回を超え、今年12月から23年目に入ります。同じ時間帯に放送し続けることで信頼につながっているようです。

吉冨 ドライバーの残業規制が強化される2024年問題は物流業界全体の課題です。課題解決のために荷物を出す側、受ける側、それにわれわれ輸送を担う業者が連携して、荷物の集配における機械化や効率化に最適な方法を追求していく必要があります。現在、当社の一番の課題は人手不足。当社では男性の育児休業取得実績もあり、働きやすい職場環境の改善にさらに注力しているところです。

野口 お客さまの相談に対応しているなかで、私自身も常に勉強しないと適切なアドバイスやサービスを提供できないことを痛感しています。だから、さまざまな業種・業態の方々と出会い、情報交換することで自分の引き出しを増やしていくよう努めています。事業承継や相続などはお客さまの資産状況などデリケートなこともオープンにしていただく必要があります。10年、20年という長い年月をかけてお客さまとの信頼関係を築くことを常に心がけています。

 

鹿児島の未来を切り開くために貢献

野口 高校まで宮崎で育ち、東京で大学時代を過ごし、卒業後は保険会社で横浜、山口などを回った後、鹿児島で独立してから24年になります。自分の実体験から、外の景色、大海を知ることで人間は成長できると思っています。若いうちに地元を離れ、そこで学んだことを鹿児島に帰って生かしてもらいたい。企業経営者の2代目、3代目の方には特に先代と葛藤しながらもぜひ頑張ってほしいと願っています。

吉冨 自分の経験からも他人の釜の飯を食うことは大切なことだと思います。ただ、鹿児島に帰ってくる若者を受け入れられるマーケットを確保することも大事です。当社のトラックドライバーには県外出身者もいます。Uターン・Iターン者の受け皿に当社がなることも鹿児島の活性化につながると考えています。

野口 保険会社の最初の赴任地は鹿児島で、4年間いました。隣の宮崎出身ということで好意的に受け止められましたが、やはり壁を感じました。ただ、時間の経過とともにお客さまの懐に入り込むにつれてとても温かく迎え入れてもらいました。鹿児島支店時代を含めると鹿児島生活は30年近くになります。私のようによそ者が鹿児島はいいなあと思える人が増えれば鹿児島の未来も明るくなるのではないでしょうか。

吉冨 我が家では子どもが10歳になると、私と2人で十島村を訪れることを実践しました。満天の星空や島民の生活を体感してもらうためで、子どもたちにとって思い出深い地になっているようです。離島は鹿児島の宝ですが、人口減少は本土以上に深刻です。日ごろの事業活動を通じて離島の生活基盤をしっかり支えると同時に、各島の代理店と連携しながらUターン・Iターン者や交流人口の増加に役立てればと考えています。今回の地域ソフィア会全国大会も南西諸島の島々の魅力を知ってもらうきっかけになればと願っています。

野口裕幸社長
「企業経営や家計のサポート役」
マイエフピー
社長 野口 裕幸
有限会社マイエフピー HP